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埼玉県所沢市の保育園などで行われている制度で、下の子どもが生まれた親が育児休暇を取得した場合、保育園に預けている上の子どもを退園させなければならないという制度をめぐって行われていた裁判で、さいたま地裁は29日付けで今月から退園となった3歳の女児について、退園の停止を認める決定を出しました。





これによりこの女児は10月1日より再び保育園に通えることになりました。

地裁の見解

埼玉地裁は退園を決めるにあたり、所沢市が法律に定められている聴き取り手続きを保護者に対して行なっていなかった点をあげ、「違法であると認められる余地がある」などとしています。

一方で別の保護者たちが起こした同様の裁判は、同地裁にて7月に申し立てが却下されており、退園を認めないとする司法判断が出たのは今回が初めてです。

所沢市側の反応

このさいたま地裁の判決について、「市として決定文をいただいておりませんので、何とも申し上げることはできません」と所沢市はコメントを出しています。

裁判の内容

下の子供が生まれて保護者が育児休暇を取得した場合、すでに保育園に在園している上の子どもを退園させて、家庭で子育てしてもらう埼玉県所沢市の運用方法は、子供・子育て支援法施行規則などに反するとして、保護者11人が6月25日に市を相手取り、退園の差し止めを求める行政訴訟をさいたま地裁に起こしたものです。

所沢市の制度

今年度から所沢市では、下の子どもの出産に伴い保護者が育児休暇を取得する場合に、保育園に通う上の子どもが0〜2歳であれば原則として退園させるものとする制度の運用を始めています。

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目的は保育園の空きを待つ待機児童を減らすことで、育児休暇を終えて復職する際は、上の子ども・下の子ども共に入園選考のポイントを加算し、希望する保育園に入れるようにするとしています。


この制度に対して藤本正人市長は「より保育を必要とする人に手を差し伸べるのが市の役割」とコメントしていましたが、今回の判決後にはまだコメントを出していません。

 

「子どもに負担」訴える保護者

保護者らは、育児休暇を取得した場合でも、子供・子育て支援法施行規則では上の子どもの保育の必要性が認められていると主張し、提訴後に行われた記者会見では、「子どもにとって大好きな先生や友達と過ごせなくなることは大きなストレス」と母親の1人はコメントしています。

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代理人を務めた原和良弁護士は「市の政策は、国の少子化対策や女性の社会進出支援、親の願いに逆行するものである」と主張していました。

 

他県でも待機児童の問題は深刻

3年連続で待機児童の数が全国最多となっている東京都世田谷区では、施設を増やしたにも関わらず、問題は解消されませんでした。

それは保育士の数が足りていないことが理由でした。
都市部を中心に保育士の求人倍率は上昇しており、施設を増やしても待機児童は解消できないのが現状で、
自治体間での保育士の奪い合いにまで発展しているといいます。

昨年は認可保育所を新たに15カ所設けるなどしていましたが、保育士不足により目指す定員数には届きませんでした。

 

幼稚園志向から変化

以前は幼稚園志向が強い傾向にありましたが、近年は共働き世帯が増えたことで保育所施設の需要が急増しているといいます。

厚生労働省は成り手を確保するために、保育士試験の実施回数を年1回から2回へと増やすなど、保育士不足の現状を解決するべく動き出しています。

全国的な問題となっている待機児童ですが、それを解消するべく所沢市は上記のような制度を開始しました。
しかしそれは子どもを複数持つ家庭では受け入れがたい問題を抱えており、双方の問題を解決するのは難しそうです。

保護者たちが安心して働けて、子どもたちが健やかに過ごせる社会のために、国はこれからも制度を整えることに力を注がなければなりません。