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出生前診断で「検査結果は異常なし」と医師から告げられたにもかかわらず、生まれてきた子供はダウン症を患い生後3ヶ月で亡くなってしまったという、出生前診断の告知ミスをめぐる国内初の訴訟に、およそ1000万円の賠償金を認める判決が下されました。





裁判が起こるまでの流れ

北海道に住む夫妻に4人目となる子どもが授かり、2011年に函館市にある産婦人科「えんどう桔梗マタニティクリニック」にて超音波検査を受けたところ、
「赤ちゃんの首の後ろが少しむくんでいるようです」と胎児に異変があることを告げられました。

胎児の後頭部のむくみは、先天的な染色体異常、「ダウン症」の可能性を示すものだといい、このとき夫妻の妻はすでに41歳の高齢だったため、万一を考え羊水検査による出生前診断を受けることに決めたといいます。

そして検査から3週間後にクリニックの院長こ遠藤力医師から
「検査結果は陰性でした。何も心配はいりません。」
と結果を告げられます。

夫妻は40歳を過ぎてからの4人目の子供のため、障害を持っていたら育てられるか不安が大きかったため、その結果をきいて安堵したといいます。

 

しかし出産を迎えた同年9月、予定日の3週間前に胎児の状態が危ないと言われ、緊急帝王切開での出産になり、生まれた直後に夫妻は出産を担当した医師からこう告げられました。
「お子さんは呼吸機能が十分に働かず、自力で排便もできません。
ダウン症をはじめ多数の合併症を起こしています」
その瞬間は何を言われたかわからなかったという夫妻ですが、羊水検査をしたのにありえないことが起きたと思っていると、「おそらく遠藤先生のミスだの思います」と出産を担当した医師から言われたといいます。

 

赤ちゃんの障害は重く、ダウン症、肺化膿症、無気肺、黄疸、肺や心臓・皮膚からの出血など10以上もの合併症があり、すぐに集中治療室に運ばれましたが、懸命の治療も虚しく同年12月にわずか生後3ヶ月で亡くなってしまいました。

この夫妻が遠藤医師に対して計1000万円あまりの損害賠償を求める訴訟を起こしたのは2013年5月になってからでした。

 

夫妻の訴え

訴えの内容は大まかにふたつのの部分に分けることができます。
ひとつは「夫妻に羊水検査の結果を誤って伝えたことについての慰謝料」です。


これについては遠藤医師自身が、
「今回の件は、私がデータを見誤ったことに起因していることで、自分の過失を認めております」
としており、判決においても、この訴えはほぼ全面的に認められる結果となりました。

判決文によれば、「夫妻は遠藤医師による説明ミスのせいで妊娠を続けるか否かを選択する機会、また、妊娠を継続した場合に、生まれてくる子供に対して心の準備や養育の準備をする機会を失った」
として、慰謝料が認められたと考えられます。

しかし、夫妻はふたつ目の訴えとして「遠藤医師が検査結果を正しく伝え、人工妊娠中絶を選んでいればら赤ちゃんは生まれず、苦痛を味わうこともなかった。したがって『生まれたことによって赤ちゃん自身が被った苦痛』に対しても、慰謝料が支払われるべきである」と、日本では初となる訴えを起こしています。

しかし海外では前例があり、賠償が認められた例も存在しています。

この訴えに込めた夫妻の思い

「私たちは息子が受けた苦しみに対して、ミスをした遠藤医師本人から謝ってもらいたいと思って訴えや起こしたんです。
確かに、もし告知ミスがなければ、あの子は生まれてこなかったかもしれない。
でも一度生まれてきた以上は、痛くて泣いている我が子に、何かしてやりたいというのが親として自然な気持ちではないでしょうか。」

と夫妻は語っています。
しかし賠償金は全額認められたものの、このふたつ目の訴えに関しては『亡くなった子供に対して慰謝料を支払う義務はない』という判決が下りました。

その結果について夫妻は
「残念です。たとえ私たちへの賠償金が減ったとしても、遠藤医師には一言、息子に対して謝ってほしかった」と語りました。

この判決結果にベテラン産婦人科医は

「私も1日に何人もの妊婦を診て疲れているときに同じような見落としやミスをするかもしれない。
出生前診断を受ける人が今以上に増えれば、産婦人科医はこうした訴訟に常に悩まされるようになるでしょう」
とあるベテラン産婦人科医は語ります。
またおよそ1000万という賠償金額についても少し高いように感じるとも言いました。

出生前診断で異常が見つかると9割が中絶

昨年の春に始まった新型出生前診断では、胎児に先天的な異常があると知った妊婦のうち9割以上が人工妊娠中絶を選択したといいます。

誰の身にも起こり得るこの問題を、あなたはどう思いますか?